金属部品の商社業をしていて、加工先の確保・開拓に苦労している人は増えているのではないでしょうか。
その背景にあるのが、日本の製造業の衰退です。
特に、フットワークが軽い企業規模が10名以下の零細企業(町工場)の減少は著しく、仕事の持ち回りができなくなってきています。
その影響もあって、現在では商社業を生業とする者にとっては、加工先確保がどんどん厳しくなる一方なのです。
その打開策として多くの方が海外調達を視野に入れているようですが、そもそもの目的から逸脱してしまっている方も多いと見受けられます。
今後、拾ってきた案件を上手く処理するためには、営業活動の中でお客様に「海外調達の意図=グローバル調達」ということを適格に伝えていく必要性が高まります。
さもなくば、いつまでたっても「加工先(協力会社)がない・・・」という悩みから脱出できません。
海外調達とグローバル調達は似ている言葉ですが、考え方(目的)が異なると思ってください。そして、それをお客様に適格に伝えて「自分が何を”価値”として提供できるのか」を口説いていきましょう!
海外調達とグローバル調達の違いとは
海外調達とグローバル調達の認識の境界線は曖昧であり、混同してしまいそうでもあります。
ですが、その意味は全く違います。
グローバルとは世界的な規模、全体を覆う様子、包括的というような意味があります。
本来は日本国内にはないものや技術(得られないものや技術)を海外に求めるということが海外調達=グローバル調達の意義でしたし、海外から得たもの(技術)で新たなものやサービスを生み出すことこそが目的でした。
言い換えれば、海外に存在するオリジナリティの共有と利用がグローバル調達の一番の目的だったのです。
ところが、いつしか海外調達は海外との経済格差を利用したコスト削減が目的化してしまったのです。
ですが、この目的はやがて険しい道のりへと変貌します。
その過渡期にあるのが現在でしょう。
これまで発展途上だと言われてきた国も、OEMの活況や経済発展によって大きな力を蓄えてきました。それに伴って、日本企業へのコスト削減のメリットは小さくなっています。
それ故、海外メーカーの発掘は多大な時間と労力と費用が伴います。
現地視察、テスト加工、その他のやり取りなど。
新たにコストが安く、品質も納期も守ってくれる優良工場を見つけ出すのは至難の業です。
しかも、海外の良い企業ほど自分を売り込むということをしません。
そんなことをしなくても、仕事は沢山舞い込んでくるからです。
今、日本の部品加工で求められている”価値”とは
今までの営業ならば、海外で製作してコスト削減しませんか?が価値の提供でした。
価値=お金 ですね。
しかし、海外の人件費もジワジワと都市部では上昇しており、日本の人件費と大差ないようになってきています。
そのうえ、海外製と日本製の価格競争も一部では起こっており、日本製の方が安いケースも多々見られるようになった気がします。
その理由の1つに、東南アジアから研修生や技術者を沢山呼び込み、国内生産コストを下げていることがあると思われます。
実際、町工場を渡り歩いていると、多くの会社でベトナム人やフィリピン人、インドネシア人などの従業員が一生懸命に働いている姿を見かけますし、人材不足を補うためには仕方ないのかもしれません。
しかし、外国人労働者の受け入れには限界がありますし、結局、昔ながらの零細企業は淘汰されていっています。
つまり、日本の国の生産力そのものが落ちていっているということであり、部品の種類によってはもう日本で作っていないものさえあります。
それを象徴するかのような出来事の1つに、2017~2018年にかけて日本では新たな工作機械の納期遅れが大きな問題となりました。
メーカーは機械を受注しても、機械を作るための部品が入手できない事態に陥ったのです。
その理由は、主要機械部品の生産は全て中国で行っており、中国も同じく工作機械の受注が増えたために中国国内への部品供給が優先されたことにあるからでしょう。
ここまでくると、日本のものづくりの世界競争力は海外に委ねられているのと同じです。
むしろ、日本には勝ち目が無くなっていくのが目に見えたのではないでしょうか。
海外生産コスト上昇、国内生産力の低下、人材不足・・・
こういったマイナス要素が我々ものづくりに携わる人間にのしかかってきた時、あなたならどのような打開策を考えるだろうか?
もはや海外生産の価値はコスト削減にあらずです。
資本主義の一歩先へ「価値の多様化」
モノが無い時代に人々はモノを欲し。
食べ物が無い時代には食べ物を欲し。
それらの対価としてお金というものが流通するようになって、人々はお金を欲するようになりました。
本来、私たちが働くというのは食べるモノや着るモノ、住む場所を確保するためというのが目的でした。でも、この世のほとんどのモノがお金さえあれば手に入るという時代になり、いつしか私たちはお金を手に入れることが目的に変わってしまったのです。
しかし、お金の価値というのはそれぞれの国がただ保証しているに過ぎません。
国が違えば価値は変わります。
一万円札を握りしめてアフリカのどこかの国にあなたが行った時、その一万円札はどれだけ役に立つだろうか。
少し飛躍した例えになりましたが、とりわけ先進国はこの100年余りの間にモノに溢れた社会へと変わりました。
モノだけでなく、様々なテクノロジーが私達の生活を大きく変え、考え方さえもかえつつあります。
今を生きる私たちは、お金だけでなく、お金に代えがたい価値を一層求めるようになったのではないでしょうか。
それは、例えばコミュニティの提供、時間の提供、煩わしさの解消など色々と考えられますし、そういったニーズ(必要性)ではなく欲求を満たすための新たなサービスが台頭し始めています。
同じことが金属部品の商社業でも言えるようになる日がきっと来るでしょう。
加工先の確保が見つからないので、海外調達も考えないといけないがどうやって客先に営業をかけようか。。。
このような問題を切り抜けるために、我々生産者としてはユーザーが何に一番困っているのか?を考える必要があります。
ただ、部品が欲しい。安く欲しい。短納期で欲しい。ということを違うアプローチで攻めることも試みて欲しいと思います。
人々が感じる価値は多様化しているのですから。
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営業を有利にするためにはメリットの分散化を狙う
仕事を獲得するためには、自分の武器と相手の弱みをしっかりと把握しておくことが基本中の基本ですよね。
自分に足りないもので攻めても返り討ちにあうだけです。
安くします!というのは、結局自分の身を削って相手に譲歩しているだけ。
あなたの価値を自分で減らしてはいけないのです。
お金というものは、あなたが動いた全ての事に対するお礼です。
それよりも、自分が相手に与えることのできるメリットは何かを考えて訴えかけることをしないといけない。
それはあなたが逆に仕事をお願いするときにどんな人に頼んでいるのかを思い出せば分かりやすいと思う。
ただ、値段が安いだけでなく、あの人に相談すれば色々と考えてくれる。よい方法を紹介してくれる。
あるいは、面倒な品質管理チェックも全部やってくれるので便利で、自分は違うことに有効に時間を使える。
など色々とあると思います。
そういった、相手に与えられるであろうメリットを細かく分散化しつつ営業トークの中に織り交ぜて訴えてみてはいかがでしょうか。
その時のあなたの強み(ツール)の1つとして海外での部品加工という武器を持てばよいのです。
その時こそ、海外調達とグローバル調達の違いを意識してみてください。
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