海外の工場メーカーから部品調達をする時には、様々な問題や注意点がある。
国内調達と同じ感覚で加工依頼を出してしまうと、大きな痛手を被る場合もある。
もしあなたがこれから海外調達も視野に入れて営業活動をしていきたいと思っているのであれば、全てを中間業者に丸投げすればよいという感覚を持ってはならない。
何故なら、中間業者も良い客には本気で頑張るが、適当・面倒な客相手では懸命に動かないからです。
所詮、会社も人間の集まりであり私情が伴います。
仕事を効率よく動かすためにも、是非、海外調達における注意点を覚えておき良き協力会社を見つけられるようにしておいてください。
ここでは、貿易会社や海外の工場と取引のある協力会社に部品加工(海外調達)の依頼をしようと考えたとき、どのようなことに注意しておかないといけないのかについて紹介する。
品質管理の問題
日本国内での調達の場合ではたいして問題にならなかったことでも「問題になるかもしれない」と心構えしておく必要がある。
よく「普通は・・・」という言葉をお客様から聞くことがあるが、海外調達を実際にしている者からすれば、その普通は誰が決めた普通ですか?と言いたくなったりもします。
その中で一番問題となりやすいのが品質管理なので、その注意点を挙げてみよう。
CADデータ支給ができればベター
品質管理の前に図面そのものが見えづらいものが一番困ります。
手書きの図面はもとより、何回もFAXで周りまわって来たものも図面に書かれた数字が「6」なのか「8」なのかも判別できないようなものは、基本的に製作拒否されることもあります。
また、数字だけでなく、注意やコメントなども手書きで書き加えているものは、何を書いているのか読めなくなってしまっているのは論外です。
日本の場合だと、問い合わせをしながら何だかんだと製作したりもしますが、海外はそういうわけにはいかない。
何故なら、万が一クレームを受けた時の責任が、加工会社にあるのか図面を支給してくれたお客様にあるのかを言い争う事態になることを懸念しているからです。
そうならないためにも、もしCADデータを用意できるのであれば図面と一緒に支給しましょう。
できることなら見積もりの段階から提示してあげると親切です。
加工における注意点がある場合は必ず図面にも記載する
今時の図面のやり取りはFAXだけでなく、メールやスマホアプリのライン(LINE)を使うことだってあります。
部品加工では図面上には指示がないけれども「こうしておいて欲しい」という要望を付け足すことが頻繁にある。
細かい話だと、「指示なき面は糸面」、「G記号はないけど、研磨しておいてほしい」、「熱処理検査表をつけておいてほしい」というようなことから、梱包は10個ずつまとめておいてほしいなど。
そんなことまで?と思うことだって、できる限り指示しておく方がよい。
ただ、それらを図面に書き込むことでごちゃごちゃした図面になりそうな場合は、注意事項という簡易文もメール本文とは別に添付しておけばよいです。
地域ごとによる得意不得意のバラつきがある
これは海外に加工依頼を直接頼む業者側の課題でもあるが、特に広い中国であれば地域ごとに得意とする加工品が違ったりします。
その地域周辺で盛んな産業によって、地場の加工工場も質が大きく異なります。
それに現地の加工技術者もより給料の高い会社で働きたいと考えているため、工業が発展している地域に集まってきます。
価格と品質のバランスを考えて、どこの地域で加工してもらうのがベストなのかは少し時間をかけてでも発掘していく気持ちを持ってください。
例えば、造船などが盛んな地域の加工工場に、カメラ部品の製作依頼を出すと・・・
想像に難しくないはずです。
これはあくまでも極端な例だが、どんな加工が得意かということをリサーチしつつ色々と試していくのが良いと思います。
海外調達をしてくれる中間業者がどのようなサプライヤーを抱えているのかということが、注文を出すあなたにとって重要であり、色々と相談するべきでしょう。
1回、2回のトライで「無理だな」と決めるのは早計であるとも言っておく。
海外調達をしている業者にとっても、サプライヤーの確保は常に課題であり年々加工対応の幅が広がっているであろう企業もあるはずなのです。
仮に今回はダメだったとしても、数か月後には上手く対応できるようになっているかもしれないということです。
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納期の問題
海外で部品加工をして輸入するということは、それだけ製品が手元に届くまでに時間がかかるということです。
部品加工の時間、輸送の時間、通関処理の時間、国内輸送の時間。
国内調達と比べると煩雑な事務的作業も多い。
弊社が対応している中国や台湾では、DHLなどの航空便を利用した場合、発送した翌日、あるいは翌々日に手元に届くことが多い。
もちろん悪天候もなく、通関処理もスムーズに進んだらの話だが

重量が大きいものは船便を使うこともあるが、その場合は流石に翌日にというわけにはいきません。
概ね4,5日で日本の港に入りますが、そこから通関処理をして3、4日くらいで手元に届きます。
もし、通関処理などでトラブルがあった場合は1週間以上も荷物が動かないということもあります。こうなるとかなり厳しいですね。
ですから、納期管理の安定性は国内調達と比べるとはるかに不安定になります。
そのため、海外調達では4,5日くらい早めの納期設定をして発注をかけておくとよいかもしれません。
ちなみに、単品加工ものであれば発注後の納期は平均して1ヶ月程度が多いですね。
価格の問題
あなたが海外調達において価格の面で注意しないといけないことがいくつかある。
それは以下のようなことです。
- 外国為替の変動によって、価格が変動することもある
- 正式発注をした後に、仕様変更があった場合は些細なことでも再見積りを要求されることもある
- 見積り時のロット数と実際の発注ロット数が異なる場合も再見積りを要求されることもある
- 口頭だけの発注は基本的に無効である(正式な注文書が必要)
為替は説明不要でしょう。
また、よくあるのが発注をしてから「やっぱり寸法変更があります」というのは気を付けておいた方がよい。
大抵は再見積りが必要です。
見積り時のロット数と実際の発注ロット数が異なるということは、国内調達でもトラブルの元ですが、海外調達ではそれ以上に問題になります。
ですから、必ずロット数は固定しておくべきです。
最悪、製造拒否をされてしまうこともありますので。
最後にあるあるですが、注文の仕方にも注意が必要ということ。
海外のサプライヤーは必ず注文書を要求してきます。
書式などは何でもかまいませんが、書面で「間違いなく注文したよ」という証拠を残しておかないと製造に進んでくれないこともある。
日本で「注文書は後で発行するから、先行手配お願いね!」は基本通用しないということです。
少し面倒くさいかもしれないが、注文書はメール等で出すようにしてください。
まとめ
金属部品加工の世界では
- 価格が安い
- 納期が短い(早い)
- 品質が良い
これら3つのうち少なくとも2つを同時に相手に提供することができれば、必ず仕事はくる。
海外調達をすることで、お客様に何を提供できるかを明確にして営業活動に当たられることをおススメします。
上記3拍子揃った仕事の要求をされるお客様は基本的に海外調達先の確保も厳しい道のりだと心得ておくべきです。
海外調達を検討する場合は国内調達ではなかった雑務的な仕事が増えますので大変かなとも感じる人はいますが、慣れてしまえばどうってことはありません。
もし、定まったルート確保ができれば意義は大きいですが、まずはこういった事情を理解した上で海外調達の扉をたたいてみよう。
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