世界の工場と呼ばれている中国に対して、世界のOEMと呼ばれている台湾。
特に電子機器分野では台湾の勢いはすさまじく、ネットブックは世界中のシェア90%を誇るのが台湾です。
海外市場進出(特にアジア市場)への取組みを模索しているのであれば、今後も台湾企業とOEM・販売締結を目指すメリットはあるはずです。
ここでは、そのメリットと今後求められていくであろうことについて言及してみたいと思う。
台湾企業OEMの立地的メリット
台湾は中国の南東部、沖縄から見れば南西部に位置しており、関西圏からだと3時間あまりで行くことができる。
台湾そのものは、人口が2,300万人程度と決して大きなマーケットではありません。
ですから、日本企業が自社製品を台湾市場で展開することを目標に事業計画を立てるということはほぼありません。
台湾国内企業でもその認識は同じで、台湾企業も台湾国内よりも欧米や東南アジアへの展開を目指しているところがほとんどです。
ただ、そういったバックグラウンドは我々日本企業にとってはプラスに働くことが言える。
OEMとして台湾企業で製造してもらった延長線上でそのままアジア圏での販売マーケティングまで委託してしまうという手段をとることもできるからです。
そもそも、台湾国内は決して部品加工において価格競争力が高いというわけではありません。
台湾の町工場に一品一様の部品加工を依頼してみても、日本と変わらない価格もしくは輸送費を含めると割高になってしまうということもあるのです。
その事実は台湾企業も認知しており、ある程度の規模の台湾OEM企業はこぞって価格競争力を得るために中国へ進出しているのだ。
日本企業の中にも、中国自社工場を持っているところもあるが、同じことが台湾でもなされているということです。
なので、中国に工場を持つ台湾OEMを見つけることができれば、製造から販売まで代理委託することで流通コストの削減なども目指せるので、中国や東南アジア市場を狙うための入り口として台湾企業と手を組むというのは1つのメリットとして挙げられます。
OEMの経験・実績が豊富である
台湾には自社ブランドを持ちつつ、今でもOEMを受け入れて営業している大きな企業がある。
例えば、有名どころであればノートブック市場でその名を知らないところはないといえるASUSや、自転車業界の大手ジャイアントも元々はOEMから始まった企業です。
ASUSの企業歴史は浅く、1989年に設立されて以降、世界中のメーカーにマザーボードを輸出している。その品質の高さが評価されていたが、2008年からはそれまで積み上げてきた実績から自社ブランドのノートブックを販売している。
ジャイアントはもう少しだけ歴史は長く、設立は1972年であり自転車の部品・フレームのOEMとして暫くは奮闘していたが、現在は自社ブランドを多くのメーカーに提供している。
日本の企業はブランドの企画・設計・生産・販売まで全て自社で行うスタイルをとってきたという歴史があり、台湾企業と比べても長い歴史を持っているといえる。
ただ、一貫して自社で行うには内部組織がより複雑になり、どこかで歯車が狂うとたちまち関連するところに支障が出たりしやすいのです。
日本企業とは立ち位置を異にする台湾企業の戦略は、それだけOEMとしての実績・経験を積み上げてきました。
その強みを我々日本企業は有効に利用するべきなのです。
ミニマムな話の例えになるが、町工場でも同じようなことが言える。
特定の加工に特化して仕事を受けている会社もあれば、色々な種類の機械を設備して多用な加工内容に対応している会社もある。
どちらが賢いかは別として、1つの加工に特化しているところのメリットは技術研鑽がしやすく価格競争にも強くなりやすいということである。
問題は、仕事の獲得(営業)をうまくできないと一向に仕事が入ってこないということでしょう。
一方で、多様な機械設備を有している企業では、一貫生産を受けることができるので多種多様な仕事を獲得しやすい。
一方でどこかの機械が壊れたり作業員が休んだり辞めたりした場合には、たちまち加工ラインが遅れることになり、たった1つの工程の支障が仕事を完結させることができなくなるというデメリットがあるのだ。
sponsored link
親日国である心理的メリットの大きさ
心理的メリットというのは大きなファクターとして認識すべきです。
ビジネスの世界では人脈が重要だと言われているが、人脈を築くためにはお互いに親和性がなければ難しい。
どんなにすばらしい技術を持つ企業と出会えても、その企業との相性が悪いと事業提携は難しいでしょう。
その点、台湾は他国に比べても親日であるということは強みだと言えます。
台湾OEM(下請け)が強い理由
日本のシャープを再建し、アップル社やその他企業のOEMとして巨大企業になった鴻海精密工業もとどのつまりは下請け企業です。
自社ブランドを展開しているわけではないが、何故ここまで強い企業となったのか。
その理由は1つの機能に絞り込んで専門分野に特化し、その技術力と競争力を磨いてきたということが背景にあるからだ。
また、台湾の高い技術力を支えているのは日本だということも忘れてはいけない。
日本から機械や基幹部品を持ち込み、それらを中国の安い労働力を使って製造・組み立てするというモデルを構築してきたのです。
要するに、他の人や企業が作った良いものをとにかく安く作るというコンセプトで突き進んできた結果が強さの秘密というわけです。
これからの台湾OEMに求められること
これまでOEM企業として成長を続けてきた台湾企業ですが、中国のパワーに押されている感は否めません。
日本企業としては、心理的・立地的なメリットも多いですが、コスト面重視であるならば中国大陸のほうが一枚上手でしょう。
これまで、ビジネスの歴史は資本主義がベターであるとして世界経済が回っていましたが、近年の経済の動き(人の動き)を見ていると、資本主義ではダメだという風潮があります。
それを象徴するかのように発展してきたのは、価値主義です。
中央集権のない仮想通貨、個人の価値を交換、時間を売買するという今まででは考えられなかったビジネスモデルが出来上がっています。
これはテクノロジーの発展と新たな経済システムが掛け合わさって出来上がったものであり、既存の価値観を大きく転換させるものとして、今後も発展していくことは間違いないでしょう。
ですから、今までは「お金」の価値ありきで「お金を増やす目的を達成させること」を提供してきたOEMというサービス形態から、新たな付加価値を各企業が打ち出す必要性に迫られている転換期でもあると思います。
今後、台湾企業とOEM契約を締結したいという気持ちをお持ちであるならば、その先にある価値の共有までしっかりと話し合うことが大切です。
ただ、部品提供してもらうだけでは十分な価値が見出せないかもしれません。
sponsored link
コメント