ステンレスの切削加工が難しいと言われる理由と対策法

ものづくり

部品加工に携わっていると、色々な金属の加工に遭遇します。

その中でも、今回はステンレスの切削加工についての紹介です。

 

今までは、S45C とか SS などを削る仕事していたけれど、転職した会社ではステンレスの切削加工をするようになった。

だけど、今までと違ってすごく削りにくい・・・・

 

そんな悩みを抱える人は結構多いです。

 

 

私の会社では、鉄もステンレスもアルミも関係なしに削りますが、やっぱりステンレスは削りにくいですね。

なぜ、ステンレスは削りにくいのでしょうか。

一般論的なその理由と対策法について紹介します。



ステンレスの切削加工を難しくしているもの

金属を切削加工する時には必ず切削抵抗により加工熱(800~1200°)が発生します。

通常、その熱は非切削物、切りカス、切削工具に分散するのですが、ステンレスは熱伝導性が非常に悪い金属のため、熱が非切削物および切りカスに逃げにくいのです。

 

つまり、発生した熱は切削工具へと溜まり工具の欠損を引き起こしたりするのです。

それ故、工具摩耗により切削抵抗が大きくなって、ますます加工熱が発生してしまうという悪循環を招きます。

 

加工熱が大きくなると、工具の破損だけでなく、非切削物であるステンレスの歪みも大きくしますし、これがステンレスの切削加工を難しくしている要因です。

 

なので、ステンレスの加工はどれだけ加工熱の発生を抑えることができるかがポイントになるんです。

鉄とステンレスの熱伝導率の比較

ステンレスは熱伝導性が悪い金属であるとしましたが、一般的な鉄やその他よくある金属と比べてどれくらい悪いのか。

それは実際に熱伝導率(W/mk)として数値に表すことができます。

詳しくは割愛しますが、その数値で比較してみます。

 

熱伝導率は周囲の温度によっても変化しますので、室温付近のおおよその値を示します。

425
400
315
アルミニウム240
真ちゅう105
80
チタン20
ステンレス15

 

こうやって見ると、ステンレスの熱伝導率の悪さが際立ちますね。

鉄の約1/5

熱伝導率が良い銀の約1/28 です。

 

よく、水筒の魔法瓶にステンレスが使われていますが、ただ錆びにくいという理由だけでなく、熱が伝わりにくいという性質(保温性)を利用しているのも1つの理由なんです。

 

ステンレスの加工硬化

ステンレスは熱伝導率の悪さ故に、加工熱を吸収しにくいのですが、もう1つステンレスの切削性を悪くしているものが加工硬化です。

簡単に言えば、一定以上の力が加わると硬くなってしまう現象のこと。

 

ステンレスはその組織構造によってマルテンサイト、オーステナイトに分かれ、よく使われるSUS304 は鉄にクロム17%、ニッケル7% を含んだオーステナイトステンレスです。

このタイプの鋼種では、強い負荷を加えると組織構造が変化(マルテンサイト化)して非常に硬くなります。

 

SUS304を切削加工をしている時、最適な加工条件を見つけられないままでいると、想像以上に切削工具に負荷がかかると同時にステンレス側にも負荷がかかってしまいます。

つまり強引に加工を進めることで加工硬化を引き起こしてしまうのです。

そうすれば、さらに切削加工は難しくなります。

 

SUS304の特性を活かして、プレス加工でわざと部分的に硬化させて丈夫にした製品もあるくらいです。

ステンレスを切削する時の対策

ステンレス(主にSUS304)の切削加工のポイントは1つです。

 

加工熱をどうやって抑えるか

 

これだけに意識を持っていくことで、そこに付随する色々な問題が解消されていきます。

 

 

対策としては、まずクーラント(切削油)は水溶性を使用する。

油性の切削油ではクーラント能力が低いので、できれば水溶性がよいでしょう。

 

切削工具の見直しをする。

特定のメーカーのチップを利用してるなら、ステンレス専用のチップがないかを調べてみよう。

新しいチップが開発され販売されているかもしれませんので、各社ホームページは適度に閲覧しておくとよい。

 

また、刃物の材質も耐摩耗性に優れたコーティングされた超硬工具が望ましい。

あるいは、仕上げ加工用のチップなどにはEB処理という特殊な処理をすることで、工具寿命が1.5~3倍も伸びることがあります。

 

興味があれば info@hirano-s.jp までメールくださいね。

処理業者を紹介します。

 

ろう付けバイトなどを使用しているなら、刃先を研ぐと思うが、その時にすくい角を大きくしてみる(12~15°)のも1つの手です。

すくい角を大きくすれば刃先強度がどうしても下がるので、切り込み量には注意が必要です。

そこは、実際にやってみた経験から条件出しをするしかありません。

使用している、機械の強度などによっても若干の差が出てきますので。

 

 

穴あけに使用するドリルはBIG TOOL が出しているビックツール 月光ドリルがステンレスには食いつきもよくて威力抜群だと評判です。

昔はボール盤やハンドドリルでしか利用できませんでしたが、機械加工用のドリルも販売されています。

 

ステンレスの穴あけに手こずっているなら、月光を利用してみると良いかもしれませんよ。

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