日本の各種メーカーの部品(資材)調達部は、いかにして仕入れコストを低く抑えるかを一つの課題とし、日本のみならず海外からの仕入れも積極的に行っている会社は多いですよね。
その部品調達手段には大きく2つの方法があります。
- 自社で直接、海外の仕入先を開拓して取引する方法
- 国内外の貿易商社などを介して海外から部品調達をする方法
自社で海外の部品調達先を開拓する場合は、直接サプライヤーを知る事ができるのでパートナーシップとしては強みが出ると思いますが、調達するべき部品の種類だけ開拓を必要とされるため、海外現地での開拓労力が非常に大きくなってしまうデメリットがある。
また、海外の取引先の数もそれだけ増えていくので事務的な面でも煩雑になってしまいます。
サプライヤーの管理が大変です。
一方、貿易商社や海外のサプライヤー開拓をしている国内の会社と取引をする場合は、顧客管理が非常に楽になります。
部品調達は一括して取引する貿易商社へ任せればよいだけですから。
ただ、品質管理、納期管理などは貿易商社任せになるため、間接的にしか訴えることができませんし、海外のどこの会社が部品を製造してくれているのか不透明なまま仕事を進めることもよくあります。
調達した部品に何の問題もなければよいですが、ひとたびトラブルが発生した時に発注メーカーはサプライヤーの状況などを知りえないので困ることがあり、時間ばかりを要してしまうケースは多い。
いずれにしても、海外からの部品調達に注目する主な理由は価格でしょう。
金属部品の仕入れにおいては、メーカーがこぞって中国からの仕入れをすることによって部品価格の下落を招き、日本の小さい町工場は大打撃を受けました。
ただ、唯一の救いは中国製が「安かろう 悪かろう」の代名詞を引っ提げていたこと。
日本の町工場は価格で対抗できない分、品質や納期、臨機応変な加工対応で中国に応戦しています。
台湾も中国と同じように部品調達が安いというイメージを持たれますが、部品加工の価格は日本と大差がありません。
もちろん、びっくりするくらい安い金額で部品調達できるところもありますが、そういった会社は品質の安定性や安心感がかなり低くなってしまいます。
そらそうですよ。
安い加工賃しか出さないと、人はモチベーションが低くなりますもの。
大企業が先頭をきって「コストダウン」をスローガンを掲げるがごとく叫んでいますが、あれは間違っていると私は思っています。
消費者が望むものは、安さであったとしてもそれ以上に品質の良さですよ。
「安かろう 悪かろう」で済ませるものと、済まされないものがあるはずで、精密機械部品に関するところは、少しくらい高くても高品質のものを望みます。
中には多機能をPR材にしている商品もあるけれど、結局、頻繁に使う機能なんて限られているので、その限られた機能が安定して私達に恩恵を与えてくれれば少しくらい高いものでも買いますからね。
大手主要メーカーは末端の消費者への意識が強すぎるのでは?と感じることが多いですが、その消費者の中にはメーカーの部品調達に関与している多くの製造業者がいることを忘れないで欲しいですね。
部品調達で叩き上げれば結局は末端の消費意欲をそぎ落としているのと同じことですから。
さて、話がズレてしまいましたが、コストダウンあるいはその他の理由にて海外から部品調達をすることになった場合、注意しておかないといけないことがあります。
私達の会社も中国・台湾のいずれからも部品調達を行っていますが、日々、色々なお客様から台湾での部品加工、部品調達の依頼を受けている中で、これは注意しておかないと困りました!という経験談(失敗談)をここでは紹介しようかと思います。
台湾に限定した話ではなく、中国や東南アジア諸国からの調達でも同じことが言えるはずですので、海外からの部品調達を考えている人は確認しておこう。
その塗装指示、本当に指示通りに仕上がりますか?
某大手メーカー様の仕事で、台湾から部品調達をする仕事がありました。
その部品はクレーンで吊らないと運べない大きさで、塗装指示が入っていたのです。
金属部品の塗装には、色々な種類があります。
ただペンキをペタペタと塗るだけではなく、焼付け塗装、樹脂(ウレタン)塗装など専門的な手法を使い分けます。
また、塗装する色についても日本塗料工業会のページにあるように、非常に細かく分かれています。
問題は、海外から部品調達する時に塗装指示をどのように出すかです。
日本国内であれば、色標番号や塗料メーカーなどの情報が図面に記載されているので問題はないのですが、海外となるとまた基準が異なります。
以前、私達が失敗したのはこの ”色認識” の差によって、納品先から「色が違う!」とお叱りを受けたこと。
もちろん、何回も塗装は問題ないですか?と海外のサプライヤーには確認しましたし、問題ない。大丈夫。という返答を信じきっていたのです。
さすがに、緑色の指示なのに赤色で塗装したというレベルではありませんが、緑は緑でもちょっと違うよ・・・という。
その ”ちょっと” というのは、色標番号さえ共通して認識できていれば無くなるトラブルなんですが、海外であるが故に難しいかもしれません。
なので、今後は塗装のみ国内業者に依頼するべきだなというのが当面の方針になりそうです。
さらに、塗装においては色だけでなく、仕上がり面でも認識の差は生まれやすいです。
「ゴミやチリが付着しないこと」、「気泡が入らないこと」という要望があったとしても、それはどれくらいまでなら許容されるのか?ということでお互いにバッチリですね!という認識がズレているはずです。
その場合は見本となるものを用意するか、特定の範囲内を目視で確認するときの基準を設けるなどが必要になります。
その場合も、海外からの調達では結構難しい。
「指示通りだ」、「指示通りじゃない」の言い合いになることだってある。
しかも、現物は海外から海を渡って輸送されるので、ちょっと手直し・・・なんて無理です。
海外からの部品調達で最も懸念されることの1つが修正が発生した時です。
送って、送り返してなんてしていると、輸送費だけで大赤字になります。
もちろん、時間も大幅にロスします。
その点は国内からの調達の方が軍配が上がりますね。
メッキや焼入れには予想以上に時間がかかる
調達する金属部品の中には、表面処理としてメッキ処理が必要になることもありますし、焼入れを要するものもあります。
日本のメッキ、焼入れは品質も良いし処理スピードも速い。
これは世界中を見てもトップレベルだと胸を張って言えることだと思います。
会社にもよりますが、メッキなら朝に出せば夕方には納品してもらえたり、熱処理も1日、2日で納品されます。
でも、海外(中国や台湾)で話を聞くと、ほとんどの会社が口を揃えて「時間がかかる」と答えるのです。
処理をするのに日本の2~3倍の日数は必要みたいです。
ということは、納期が短い案件だった場合はかなりの時間的ロスが発生します。
もしかすると、納期が土壇場になって間に合わない!となるかもしれません。
かなり精密なパーツなどは、熱処理とその後の仕上げは日本国内で済ます方がよいかもしれません。面倒ですけどね。
とはいえ、よほどでない限りは熱処理品でも問題なく使用できます。
海外製なのに高いなぁと思ったら、それは輸送コストが原因かもしれません
基本的には海外からの部品調達を考える場合は「量」の確保を前提にしておくことが望ましいです。
その理由は輸送コスト。
現地での仕入れ価格は日本国内よりも確かに安いことが多いのですが、それを日本に持ってくる時には航空便、船便にしても輸送コストが乗っかってきます。
このコストは国内での輸送コストとは比較できないくらい高い。
何百円とかいうレベルじゃないです。
単品を海外から調達した時、輸送代の方が高くなることだってあります。
こうなると、もはや何をしているかわかりません。
なので、複数の部品を一緒に梱包して送るしか輸送コストを下げる方法がないのです。
抱き合わせでコストの分散ですね。
輸送コストが1箱15,000円かかるなら、10個の部品を1つの箱に入れて送れば1つあたりの輸送費は1,500円になるし、30個の部品を1つの箱に入れれば輸送費は1つあたり500円になります。
つまり、10個を発注するか30個を発注するかで1個あたりの金額は1,000円も差が出るということ。
時々、見積りの段階で中国製や台湾製なのに高いなぁとおっしゃるお客様がいらっしゃる。
でも、それは輸送コストのことを考えていないからなのです。
小指ほどの大きさのパーツを1万個とかだったら、たぶん輸送費は数円以内に収まる可能性だってありますが、そこそこの重量があるものは輸送費が高いです。
なので、もしも単品を海外から調達するならば、毎日大量の部品の調達を専門にしている貿易商社に頼むか、いっそ日本国内での調達に考え直すかした方がよい。
ただし、人の手では持てないくらいの大きさの部品であれば、輸送コストも入れてトータルで安くなる可能性もあるので検討してもよいでしょう。
思っている以上に要・不要の細かい指示が必要になることもある
海外調達したい部品の図面があるとしよう。
それを自分で直接海外のサプライヤーに送って加工指示を出す場合も、貿易商社に図面を渡して調達委託をする場合も、加工上で注意しておかないといけないことなどは、できるだけ細かく指示しておくことが望ましい。
日本国内での仕事の回し方と海外に図面を出すときでは同じ感覚でいくと落とし穴にはまることがある。
それは、製品としてNG品が出るとか出ないという話だけでなく、必ずしも図面通りに加工する必要はない箇所だってあるはずです。
余計なコストをかけてまで図面通りに加工しなくてもいいよという場合は、そういうノウハウ的なアドバイスも付け加えておくと、短納期・低価格での部品調達につながるのです。
あるいは、刻印やレーザー印字、電刻などについても、印字するのは型番なのか、図番なのか、注文番号なのかはっきりと明記しておかないとダメですね。
時々、間違って型番を印字しないといけないのに注文番号を印字したりすることもあります。
もちろん、刻印が不要ならちゃんと「不要」と指示しないといけません。
注文する側って、結構こういう細かいところはいつも見慣れているからかもしれませんが、スルーして「加工をお願いね!」と放り投げることがあるので・・・
実際、海外から部品調達をしていくと、それぞれでここでは紹介していないような落とし穴には気付くことがあるかもしれません。
その都度、改善点を見つけてクリアしていく心構えは必要ですが、海外の企業と友好関係を築ければ強い仲間がいると思える日がやってきます。
是非、台湾もよろしくお願いします。
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