アジアで初めて同性結婚を認めた台湾が見据えるその先にあるもの

台湾文化

2017年5月

台湾では司法(裁判所)が同性結婚を認め、アジア圏では初めて合法化されました。

何十年もの間、台湾では同性婚を求める運動が続いていたので、これは歴史的な判決であったと言えるかもしれません。

 

同性婚については、憲法にある「法の下にある平等」を実現した形になるのですが、非常に難しい問題でもありました。

事実、同性婚を認めた台湾でも同性婚に反対する人は沢山います。

(キリスト教などの宗教団体が多い)

 

また、今回の同性婚に対する運動は台北(台湾北部)地域を中心に活発なようでしたが、今でも台湾南部に行くほど、古典的と表現するのが正しいかは分かりませんが同性婚に反対する意見は増えるようです。

 

かといって、少数派である同性婚を希望する人たちの人権を無視するわけにもいきません。

そうなると、同性婚を望む者へ扉を開くしかないという判断が下されたのでしょう。

 

 

2016年5月に台湾総統に就任した蔡英文氏は当初より同性婚に対して賛成派でしたが、彼女は就任当時から同性婚に対して賛成か反対かをヒートアップさせるだけで、本人は傍観し続けるだけでした。

ようやく1年が過ぎて今回の判決までこぎつけたわけですが、ここに台湾が見据えるべきものが新たに見えてきそうです。

 



そもそも同性愛と人権は人であるが故に生まれたもの

地球上で命を燃やす ”生き物” と呼べるものは、全て子孫を残す行動をとります。

それは生きる目的でもなく、まさしく本能というもの。

 

生き物かどうかさえ議論が耐えないウイルスだって、個体数を増やすために宿主となる人やその他動物、細菌に感染してDNA(またはRNA)を増やそうとします。

「もう、増えるのやめた!」

と感染しないで消えていくウイルスはいません。

 

植物も花粉を飛ばしたり、種子を飛ばしたり、キノコやカビなら胞子を飛ばしたりしながら命を繋いでいきます。

 

でも、脳が発達すればするほど、生・性・命・愛などについて深く考えるようになり、人間のように複雑な脳を持つ動物は様々な思想・考えを持つようになります。

同性愛を認めるか認めないかという思考も人であるから生まれます。

結婚という概念さえも人が作り出したものですよね。

 

おそらく、昆虫や鳥くらいだと ”同性愛” という概念はないでしょう。

 

また、人は人生というものを考える生き物であるが故に、自分が生きる世界において自分を守ってくれるものの1つとして人権を求めます。

人権とは人間であるがゆえに享有する権利(社会的権利)のこと。

 

社会的権利とあるのは、私達人間が作り出した世界で共に平等に生きるために、お互いを認め合いましょうよということです。

この考えが生まれたのは、私達が人間だからという理由以外の何ものでもありませんね。

 

 

台湾司法が認めた同性婚は台湾にどんな影響をもたらすのか

 

台湾が同性婚を認めたというニュースは周辺のアジア諸国に今後どのような影響を与えるのか?ということが議論されることが多いと思います。

日本でも同性婚が近い将来認められて合法化されるのかも話題にあがります。

 

ただ、台湾が同性婚をネタにこれからの社会的地位や世界からの見識を変化させたいという狙いがあったのではないかと推測されます。

そこに、これからの台湾が見据える未来が予想されるのです。

 

蔡英文総統の「愛の前ではみんな平等」、「1人ひとりが自由に愛し、幸福になってほしい」という言葉は人権を尊重した発言でしかありません。

しかし、世界中の同性愛者からしてみれば、台湾のトップが発するその言葉は台湾への見方に大きな変化をもたらすでしょう。

 

今、台湾は中国よりも世界中との繋がりを強化したいという姿勢が伺えます。

特に若い世代に顕著であり、独立志向が強くなっているのもそのためだろう。

 

 

台湾の強みというか、特徴は停滞を嫌うことではないかと思います。

例えば、日本の場合だと何か議論をする場合、収拾が付かずに意見が分かれるようならば、とりあえず現状維持でということが多い。

一方で台湾は迷ったらやってしまえ!という改革思考が強い。

 

この違いは実は台湾にとっては追い風となる気がします。

 

 

おそらく、しばらくは台湾以外のアジア圏諸国で同性婚が認められることはないでしょう。

そうすると、同性愛者は同性婚を求めて台湾にやってきたり、同性愛が今後もよりオープンな国となれば、同性愛者が暮らしやすい国へと変わります。

同性愛者に向けた新たなビジネスが生まれ、海外資本の企業誘致などにも繋がる可能性はあります。

 

時に、司法による判決は国に人や経済効果を呼び込む力となり得る。

また、世界の国々が持つ台湾という国のイメージを好転させていく効果もあるかもしれません。

「一つの中国」という束縛を解きたい台湾にとって、直接的ではなく間接的かつ多角的に攻めていくのは今後も功を奏する形となるのでしょうか?

台湾の行く末は注視が必要ですね。

コメント

  1. なつき より:

    同姓婚ではなく同性婚です。
    同姓=同じ姓の人。
    同性=同じ性別の人。

    カタツムリとか魚の中には、雌雄同体があったりします。雌雄同体といっても両性具有ではなく、性未分化な状態、その時の状況によって、自分の体の性を変化させる、だったと思います。
    ただ概念を持つのは、おそらく人間だけです。人間以外の動物が概念を持っていたら、人間とは別の文化/文明を作ったかもしれません。

    資本誘致はどうでしょう? 台湾の市場規模が小さいし、文化的には成熟してる感じがあるので、新規参入のための資本誘致はムツカシイのでは? と思います。
    ただ、同性婚を合法化することによって、台湾が国際的なアピールを狙ったかはわかりませんが、可能性はあります。国連脱退後、国交がある国が中国の圧力とかで減ってるので。

    one Chinaについては、個人的には、しばらくは直接相手にしないのがいいと思ってます。日中国交の時に尖閣諸島を棚上げしたように。今のPRC(People’s Republic of China)はone Chinaを譲る気はないので。

    何十年もの間、台湾で同性婚の運動が続いていたと言うのなら、単純にその運動の帰結が大きいのでは? という気もします。
    台北では地下鉄でのno pants dayだったかな?とかで、Americaniseされたとこで、自由(な性)を求める気風が強いように思えます。蔡総統が元々同性婚に賛成してたというのなら話は別ですけど、ここではそれは、わかりません。

    同性愛者が暮らしやすいというのも、少し疑問です。台湾政府が同性愛の移住者のための政策を打ち出しても、台湾の公用語は中国語でしょう。非中国語圏の移住者は中国語を習得する時間が必要ですし、中国語を習得した後、仕事を得て、台湾社会に、うまく溶け込めるかも不明です。何より、先進国では同性愛そのものは罪ではないですし、同性愛が罪の国の人が、移住先を選ぶなら、自分と近い民族の国か、社会的権利がしっかりしてるヨーロッパ諸国を選ぶようにも思います。

    なんか批判ばかりが多くなってるようで、すいません。
    ただLGBTの一人として、台湾の判決は、とても、とても意味があると思っています。

    • akihiko より:

      なつき様

      誤字のご指摘有難うございます。

      台湾が認めた同性婚について、色々とご意見参考になります。
      哺乳類とその他の種類の生物を一概に比較はできないとはいえ、「性」に対する概念を持つことができる人間だからこそ話題にもなるテーマではありますね。

      台湾は今、蔡英文氏が総統になってから少し世間を騒がしている気がします。
      その理由こそが、台湾独立にあるのではないかと思います。

      独立からの布石を打つという意味で同性婚を利用していることはなかろうか?と感じた次第です。
      決して悪い意味でとらえているわけではありませんが、共産主義で少し資本主義の世界からはギスギスした感じに映りがちな中国と対比し、世界受けの良い国づくりを目指したいことをアピールしたかったのではないかと。
      経済的な戦略、資本誘致目的であるとは言い切れませんが、そういった思惑もあったかもしれないなという個人的見解だと思ってもらえれば。

      「同性愛者が暮らしやすい」というのも、言葉の問題も確かにありますが、これも暗に台湾という国の社会的存在地位を高める目的のアピールの一環であって、本気で真剣に取り組むためには、おっしゃる通り課題がたくさんあります。

      私は同性愛者ではありませんが、同性婚について反対も賛成もしておりません。
      人が生きていく上で、幸せになるために必要なことであれば、それは必要な人に開かれた社会や国があった方が良いと考えています。
      なので、今回の台湾の判決は1つ大きな意味を持ったことには変わりないと思っています。

      ただ、中国という国がある限り、台湾が日の目を見ることがあるかないかは謎ですけど。

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