金属部品加工の世界では、国内生産指向が非常に強い人と、そうでない人に二極化する傾向があります。
「台湾で作る(加工する)」と言うと、途端に怪訝な顔をされてしまうこともあるのです。
決して、私が台湾ひいきをするわけではありませんが、台湾にも良し悪しはあります。
でも、それは日本でも同じ事。
日本の加工屋なら絶対安心なんて保障は全く持ってないし、逆に台湾の加工屋は絶対にダメと判断する基準すらもない。
「使える」と言うと台湾企業に失礼ですが、助けてもらえるところも沢山ありますし、これからもPRは続けていきたいと思います。
ここでは、今まで私が色々と台湾の工場に部品加工依頼をしてきた経験と感覚から、台湾を使うメリットになる部品の種類について提言します。
扱う部品加工の種類も弊社基準になるので、少し偏ったところもあるかもしれませんが大目に見てやってください。
簡単な加工内容の仕事は価格競争ができない
私の周囲にも、海外製で安く部品加工をさせたいと思っている人はいます。
でも、彼らはこぞって「こんな簡単な加工なら、台湾だとメッチャ安いやろ?」と言うのだ。
こんな簡単な加工
これが、そもそも間違いなんですよ。
簡単な加工ほど、価格競争させるのは難しいのです。
何故なら、日本の加工屋にも超低価格で加工を請け負う会社があるからです。
価格の低さを量でカバーみたいに量産品レベルで1000個/ロットくらいになると、単品加工をメインにしている会社では到底考えられないくらいの価格で部品加工を請け負うところはあります。
加工単価も数十円とか、数百円レベルです。
そうなると、台湾の工場が仮に日本の加工屋の価格よりも数円安い!10円安い!なんて思って飛びついても、結局は送料などで全て吹き飛んでしまうことが良くあります。
送料は価格に必ず反映されるので要注意!
みんな、加工価格にしか目がいかないんですよ。
でも、台湾から海を渡って日本に届くわけですから、送料は絶対必要です。
しかも、量産になるとそれだけ重量も体積も大きくなる傾向があるので数万円では済まなくなります。
納期の面でも、国内と比べるとやはり対抗するのは厳しいですしね。
私もこれまで、何点かは低価格勝負を台湾と日本国内の加工屋で比較してみましたが、簡単な加工ほど価格はほぼ同じです。
むしろ、送料が上乗せされる分だけ台湾が不利ですね。
穴を空けるだけとか、溝を切るだけなどの簡単な加工品は日本国内でさばく方が賢いでしょう。
ちょっと難しい加工内容だけど、価格も厳しいと悩む部品ほど台湾は有効
一昔前までは「安かろう、悪かろう」が当たり前であった海外生産部品ですが、今はもう「安くて良品」が多くなってきています。
私の知る台湾企業にも、品質と納期で勝負をするところもあります。
そこの会社は価格は正直「やや高め」です。
日本の企業と同等か、少し高いくらいの見積もり金額を提示されます。
でも、品質は一級品です。
現地に行き、工場見学をしましたが加工品例はハイクオリティでした。
マイクロドリル加工による微細穴(1/100mmレベル)をしたものも見せてもらいました。
一見すると、穴が空いていると気付きませんが光に透かすと無数の穴が空いているのがわかるものです。
あるいは、加工精度も1/1000mmレベルで管理されているところもあります。
測定は3次元測定器での測定になります。
こうした超ハイクオリティの会社もあれば、そこまでではなくとも、かなりの高品質な良品加工をしてくれる会社も多くあります。
最大のメリットは「これくらいのレベルの加工ならこれくらいの価格は必要だろう」という我々の認識を良い意味で裏切ってくれるところがあることです。
本当に、時々「安っす!!」と驚くことはあります。
なので、ちょっと難しいけど加工はできなくない。
でも、日本の加工屋に頼むとそこそこ高額になってしまう。
というような「品質は中の上、価格は中」という部品加工については、台湾が有効ってことです。
面倒な加工なのに、価格が厳しい部品
私が今まで遭遇した部品加工のジャンルの中でも、とりわけ価格が厳しいと思う業界があります。
それは建築・土木関係。
私達がメインに取り扱う部品は自動車産業が多いのですが、中でも消耗品は非常に安い。
メーカーは町工場を叩き上げます。
メーカーが直接叩かなくても、メーカーの1次商社や2次商社が叩き上げます。
そんな状況にヒーヒー言っては、ブーブー文句を垂れ流しながらも働く町工場なのですが、建築・土木関係の部品加工の引き合いや相談を受けた時には衝撃でした。
まだ、こんなに安い価格で対応できる会社あるの!?って思うくらいに安価な加工代しか出ない部品がわんさかあります。
図面を渡され「検討してみて」と指値を見せられると、ガクっと倒れそうになる金額が目に入ります。
加工内容はさほど難しいものではなく、寸法公差も緩くて「使えたらいい」っていうレベルなんですけど、とにかく価格が厳しい。
品質管理をミクロン単位で指摘される自動車部品とは180度異なる世界です。
別世界。
そんな建築・土木関係の部品加工って、結構大きなサイズのものが多い気がします。
これまで、私が関与したものがそうだっただけかもしれませんけどね。
何より問題は価格(加工代)です。
通常通り、見積もりをすると単価5万円くらいかなと思うものでも、指値は1万5千円。
どうやったら、この金額でできるんですか?と逆に聞きましたからね(笑)
もう、諦めましたというより、バカにされている気がしてやる気さえも起こりませんでしたが、念のため台湾企業に打診してみると「出来る」との返事が。
マジで!?
もうビックリですよ。
確かに、台湾でもこんな対応ができるのは一部の企業のみですよ。
ほとんどの会社は「無理です~」って返事してきますからね。
それが当たり前。
それにしても、スゴイ会社もあるもんだわと思いました。
というように、日本でありそうでない「低価格で品質にそこまでうるさくない部品加工」なら台湾でも対応できる会社があります。
数万個レベルの量産品
材料を自動で供給しながら部品加工ができるバーフィーダー
鍛造品1つ1つのワークを加工するごとに供給、把握して量産加工するチャッカー(ハンドワーク)など、様々な方法で数千個~数万個、時には数十万個以上の量産加工を請け負う会社が日本にもあります。
ここ数年、量産部品の類の案件に接触して依頼、私も月産数万個というレベルの仕事の引き合いを受けることが増えてきました。
そういった案件の加工屋探しで最も困難なことは、既存設備で新たな量産加工品を受け入れてくれる会社が極端に少ないということです。
すでに抱えている案件だけで、間に挟む余地がないというのだ。
数百個レベルなら、どこかで挟もうか?と考えてはくれるのですが、数万個となった途端に「そりゃあ、無理やわ」と一蹴されることも少なくない。
これまで、何件もの量産加工屋に接触したが、思うような対応ができるところに巡り合っていません。
量産品のリスクは不良品率。
不良品率が3%の場合、100個中3個が不良。
1000個中30個が不良。
10000個中なら300個が不良ですよね。
こういった、不良品の管理が量産では大変なんです。
加工代が安ければ安いほど、このリスクは跳ね上がります。
また、機械の故障などにより製造ラインが止まった!というアクシデントが起こると、たちまち月産数万個必要な部品供給が停止するので「ごめんなさい」では済まない世界です。
そういった諸々の懸念材料を加味しながら、加工屋と相談するのですが、やっぱり量産できる会社が少ないのです。
そうやって悩む時には台湾企業も視野に入れても良いかもしれません。
台湾にも、大量生産をメインにしている会社がいくつかあります。
問題点は、材料支給かそうでないかです。
大手企業になると、自社で特別に作らせた材料で加工してくれという注文もあります。
また、材料卸商社経由の場合は材料支給させてくれって言われることもある。
他にも、鍛造品(ブランク)支給しますってケースも多い。
そうなると、もう加工屋は国内に限定されてしまうのです。
なので、材料込みの完成品での量産加工なら台湾企業も視野に入れてみてください。
これらの他にも、思いがけなく台湾でやってもらった方がいいなという部品はあるだろう。
それも、結局は経験を積むことでしか得られないものです。
実際に、台湾企業も星の数ほどあるわけで、自分がどこの企業と繋がりを持てるかもこの先わかりません。
もしかすると、もっともっと色々な加工ができる会社と巡り合うことになるかもしれませんしね。
とにかく継続することだと信じています。
もしも、台湾での部品加工を検討しているならご一報を!
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