日本では、多くの会社で決算月を迎える3~5月に金属部品加工の世界において駆け込み注文が殺到することがあります。
ただでさえ必死こいてなんとか対応しているところに、追い打ちをかけられるごとく仕事が舞い込むとてんやわんやになることも。
私もそんな毎日にヒーヒー言ってる一人でもあります。
「仕事がさばき切れない!どーしよ~」なんて悩むときに台湾企業という協力会社があるのは心強い。
仕事の受注容量を増やすことができるメリットは大きく、国内で「暇やぁ、暇やぁ」といっている外注先に仕事をお願いするよりも、実は台湾製の方が品質が良かったりもするのです。
日本国内で忙しい!とバタバタしている会社は、忙しい理由がそれなりにある。
暇や!とボヤくしかない会社も、それなりに暇な理由があるのです。
そこは悟ってもらえればわかるかと。
今や、仕事の受注は偏りを見せている傾向にあります。
忙しい会社はいつも忙しい、暇な会社はいつも暇。
作る部品に対する客先の評価が違うんでしょうね。
さて、台湾で作ってもらう部品加工の品質は全体的にかなり良い傾向にあります。
今はね。
以前は酷かった・・・
「日本のものづくり基準はこうである」という意識の伝達を継続的にプッシュしたことが大きいと思う。
そのお陰で、ようやく少しは自信をもって台湾製を勧めることができるようになったのですが、それでも今なお課題として挙げることができる項目が人心掌握です。
弊社に協力し、台湾現地でマネージャーとして動いてくれている仲間としてリンちゃんがいるのだが、彼女も頭を悩ますことがこの人心掌握。
ただ単純に協力会社の担当者に発注を依頼するだけで、勝手に納期通りに部品が出来上がってくるほど生易しいものではない現実を紹介しておこう。
上司は部下の、部下は上司の悪口を言うものと割り切る?
これは台湾企業に限ったことではないのかもしれないが、会社というのはその規模に関係なく人と人が織りなす組織で成り立っています。
それ故、上司、部下という関係性は必ず存在する。
経営取締役員と従業員という関係も同じだ。
上司と部下がお互いに完全に100%信頼し合うことのできる会社を作ることを美徳とし、その理想像を追い求める経営者は多いのですが、従業員にとっては少なからず口に出せない、出しにくい不満もあるはずです。
会社の規模が大きくなればなるほど、千差万別の従業員が所属しているわけですから全員の要望を叶えることは難しい。
だからこそ、社則などのルールというものが存在するわけです。
また、部品加工を請け負う工場のような場合、機械作業を行うオペレーター業に従事する従業員は、役員がどのような仕事を普段からしているのかをちゃんと知らないことも多く、役員もわざわざ全てを話す必要はないと考えていることがある。
ただ、人間は他人を客観的に一部分しか見ずに判断してしまう生き物であり
「社長は会社のお金を使って毎晩外食しているらしいよ!羨ましいよね!」
「役員はいつもデスクの椅子に座ってパソコンの前にいるだけなのに、高い給料を貰っているらしいよ!納得できないね!」
「よく出張だといって、出かけるけど本当はただの遊びの旅行じゃない?」
このようなヒソヒソ悪口を従業員は言ったりもする。
たとえお客様との接待であろうと、難しい議題に悩まされていようとも、その仕事ぶりなんて工場の現場で体を動かし働く従業員の目には何も映っていないのです。
逆に、役員も従業員の働きぶりに目を行き届かせることが難しいことがあるため、結果しか見ずに「あの従業員が加工する部品は不良が多い!」なんて指導することに終わってしまう。
部品加工会社の場合、納期の遅れや品質の悪さは会社のイメージダウンに直結します。
それを懸念して、従業員をスパルタに指導する会社も台湾には多い。
特に、日本や欧米諸国からの加工依頼を受けるためには、品質と納期を徹底することでPRしたいからです。
役員のその思惑とは裏腹に、なかなか品質が安定しなかったり、納期が守れなかったりするとイライラの矛先は従業員に向き、工場長などに厳しく徹底するように突っ込むわけです。
そうすると、従業員からは「役員は口で言うだけだからいいよな!」なんて思われるのです。
これはお互いに悪口を言うものだと割り切るべきでしょうか?
この問題に関するマニュアル化された解決策は残念ながら無い。
会社の形態によって、その中身がそれぞれ異なりますから、自社の問題点はどこにあるのかを俯瞰できるように経営者が成長せざるを得ないのです。
従業員を部品加工をするためのロボットとして扱っていないか?ということを今一度思い直すことは、台湾の工場では必要なところです。
人心掌握をすることの意味。
人心掌握とは何か?
これらのことを考えるべきだ。
従業員が役員の悪口を言うことの問題よりも、役員が従業員の悪口を言うことの方が重篤性が高いのです。
役員は如何にして、キャラクター豊かな従業員たちを適材適所に振り分け、教育して育てるのかが課題なんですね。
従業員の悪口なんて言っている暇などないのです。
悪口を聞いてあげないと作業をしない従業員
リンちゃんはよくボヤキます(笑)
「あの工場に行くと、なかなか作業をしてくれないんですよ~」
「でも、工場のオペレーターが社長の悪口を言うのを聞いてあげると、渋々でもやってくれるんです」
これ、どういう意味を表しているかわかりますか?
結局、仕事の引き合いを受ける受けないを決めるのは、会社の役員なんですね。
仕事を受けるまでの見積もりや納期の相談などは、役員がします。
受けた後は、工場現場に丸投げし指示する。
そうすると、現場は「こんな加工やったことないよ!」「納期が間に合わないよ!」と不満を漏らす。
でも役員は「機械設備は整えてやっているんだし加工も問題なくやれるだろ!」「納期も現在のスケジュール通りに進めれば間に合うはずだ!」と言い張る。
この衝突がお互いに不満を生むわけです。
従業員:社長は現場の俺らの苦労も知らないで「やれ!」って命令ばっかり!
社長:あの従業員は文句ばっかり言う!
おいおい、そんなんで台湾の工場大丈夫か?と思ってしまいたくもなりますが、現状はこんなところも多いようです。
「王様の耳はロバの耳」理論のように、不満を社外の誰かに言うことでストレスを発散するしかないようです。
中規模の台湾企業が目指すべき取り組み
中規模の台湾工場では、より多くの仕事を獲得し、売り上げを伸ばして会社を成長させたい、安定させたいという思いが強い。
その貪欲さは日本の町工場よりも強さを感じます。
ただ、経営陣の強い思いが大きなプレッシャーとなって従業員にのしかかっているところも多いかもしれません。
相談された案件に「やる!」と答える社長がいても、従業員は内心「やりやくない」と思う乖離性が露見されるケースもある。
人心掌握という概念を社内ではなく、社外に向けがちなのが中小規模の工場社長だ。
どうすれば、お客様から注文をもらえるかを必死で考えます。
お客様の心を掴む方法は常に模索している様子です。
日本のお客様の仕事を受けたい!という熱い想いも私は知っている。
だが、決して忘れてはいけないことが従業員の人心掌握。
社長として、従業員が働きやすい環境にするにはどうしたらよいか?を考えることも仕事です。
従業員の性質を割り切って見る癖をつけるべき
高性能の機械設備を導入することや、給与を上げることが従業員への還元じゃない。
そう、私は思っています。
さぁ、穴を掘ってくれ
手で掘るのはしんどいだろうから、スコップを与えよう
いや、スコップじゃ効率がわるいから、ショベルカーを買ってあげよう
これで、どんどん穴を掘れるだろう?
この理論で仕事の押し付けを従業員にしている会社は多いが、人間のスペックは十人十色であることを忘れてはいけない。
ちなみに、スキルとスペックは概念が違うから混同しないように要注意です。
先の穴掘りにしても、穴を掘る人間がどんな人間かによってもこの理論は通用しなくなりますよね。
例えば、子供だとどうします?
子供にとって一番効率よく穴を掘れるのは、手で掘る方法です。
スコップは重くて使えないかもしれないし、ショベルカーなんて運転できません。
ショベルカーを運転できない大人だったら?
もちろん、スコップが一番良いですね。
ショベルカーを運転できる人ならばショベルカーで穴を掘れば一番速い。
なのに、子供に「もっと筋力をつけてスコップを持ち上げられるようになれ!」
ショベルカーを運転できない人に「操作方法を勉強して運転できるようになれ!」
ショベルカーを運転できるようになると「もっと効率よく作業できるようになれ!」と要望が膨らみ、強要という名の教養をしてしまうのだ。
これは教養ではない。
仕事をする人間にはスキルアップを目指す人もいれば、目指さない人もいる。
それぞれが持つ「仕事をする意義」は違うものなのです。
工場の人的システムに悩む経営者は、今一度このことを念頭に置くべきでしょう。
従業員を人心掌握するために構築すべきフレームワーク
どのような仕事にこれから取り組んでいきたいのか、どういう経営戦略を組んでいこうと思っているのかについて、経営者からの意見を客の立場として聞く機会は台湾でありました。
だが、その理想はどこまで、どのような形で台湾工場の現場に行き届いているのか不透明です。
どんなに綺麗ごとや野望を社長が私に熱弁してくれても、その熱意が工場の現場では冷めた目で見られていることもある。
これは間違いなく人心掌握からは程遠い状況にあると言える。
意外とこういう状況が見えていない「思い込み社長」は多い。
本当にお客様の要望に応え、満足させたかったら、何よりも先に従業員と経営陣の熱意の共有を目指さなければいけない。
この順番を間違えている会社は不良品が多いのです。
社長の熱意を従業員に伝える仕組み作り
まず、社長の想いを全ての従業員に行き届かせようと意気込んではいけない。
無理だから。
やるべきことは、社長の頭の中にある経営フレームワークをいくつかに分離することから始める。
何だか難しそうと思うかもしれないが、単純なことです。
社長と部長
部長と工場長
工場長と一般従業員
それぞれの間で共有できる仕事のフレームワークを作るのだ。
間を飛ばして、社長と一般従業員の間でフレームワークを作ろうとしなくてもよい。
それをすると、結局は社長のワンマン経営に陥る可能性が高くなるからです。
社長は理想論が先行してしまうこともあるが、現実として可能か否かは現場が決めると言っても過言ではない。
社長の想いを実現するためには、どのように部下に伝えるべきか、どうすべきかをまずは部長と話す。
その内容を同様に部長と工場長がディスカッションする。
この時、部長は「社長が言っているんだから」という考えは排除しておくことが前提条件です。
あくまでも、社長から提案された考えは、会社としてやれることかどうか。
やるべきかどうか。
工場長の意見はどうですか?と上司としてではなく、相談する側の立ち位置でディスカッションしなければならない。
そこで、社長の考えに反論があれば必ず提示すること。
社長も受けた反論は頭ごなしに否定せずに、一旦は飲み込むこと。
理論立てて思慮する癖をつけることが、自分も成長させてくれます。
同じように、今度はその議題を工場長と一般従業員たちで考えてもらう。
そうやって、会社の方向性を決めるべきなんです。
組織が大きくなれば、それは無理だろうと思いたくもなるが、不可能ではない。
実はそういったフレームワークの構築をしっかりとできている会社ほど、より展望性のある企業として成長するのです。
今や、日本の大手企業の倒産危機が話題に挙がったりもするが、経営基盤としてフレームワークの構築に手抜きがあったことは否めないだろう。
経営陣のワンマンな押し付け戦略が地盤を崩した格好だ。
人は石垣。
会社は人がいるから成り立つ。
人がまとまるから会社が強くなる。
台湾の中小企業にとっても、従業員にまとまりのない、烏合の衆のような会社がお客様を満足させられることは遠い未来にも実現しないと肝に銘じてほしいと思う昨今です。
人の入れ替わりが激しいから・・・・
そんな言葉を吐くことが、なくなるように努力されることを願います。
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