コスト削減だけじゃない!私が海外で部品加工をしてもらう意味

ものづくり

台湾で金属部品加工の協力をしてもらっている有限会社平野製作所の平野です。

 

どうしても、海外で部品加工をしてもらうと聞くとコストダウンができるという金銭的メリットばかりを言われてしまい、私が台湾に協力してもらっている本当の意味が伝わりきれていないのかなぁと思うこともよくあります。

 

 

「これ、台湾で作らせたらめちゃめちゃ安いやろ?」

 

こんな言葉を取引先の方からまたまた、聞くことがありました。

う~ん。

場合によりけりかな。。。。

 

 

以前、こんな記事を書きました。

『安さで勝負する!』そんな理由で台湾を利用する時代は衰退する
先日、仕事関係の知人からこんな相談を受けた。 「今、○○のような仕事の案件の相談を受けているんだけど、台湾でやったら安く済むかな?」 それに対する私の答えは「わかりません!」です。 え~って思われるかもしれませんけ...

この記事では、台湾の賃金が少しずつではあるが上昇しているということ。

これからも、日本の賃金と横並びになる日が近いのではないかということを書いております。

 

 

それらをふまえ、台湾などで部品を作るというメリットが「安さ」以外に一体何があるのか?

ここでは、それについて説明しようと思います。



海外のコスト安の縮小傾向と現実

 

今でも金属部品加工の世界では、とにかく安い労働賃金で大量の人をロボットのように使う人海戦術で対応するところがあります。

人件費は国の経済状況に左右される部分が大きく、一部の発展途上国では低賃金・長時間労働というまさに今話題の ”ブラック” な環境で働かざるをえない人たちが沢山いるのです。

 

ですが、こういう戦略はもはや時代遅れになりつつあります。

 

 

無謀とも言える大企業からの低価格要求に応じ続けている会社は、仕事の確保のために否応なしに「奴隷化」している部分はありますけれど、労働時間に見合わない給与しか与えられない労働者は幸せなのでしょうか?

富裕層や中所得者を満足させるためだけに、彼らは働いているわけではないのに。。。

 

 

金属部品の主役産業でもある、自動車産業でも同じようなことが起こっている。

それは、海外だけでなく日本国内でも昔から続いていることです。

 

 

結局、いつも泣かされるのは末端の町工場なのだが、それでも対応しきれない価格の強要があった場合は淘汰されてしまうのだ。

安く作る方法を考え、安く材料を仕入れるルートを開拓して、安い人件費の確保のために東南アジアからの労働者を受け入れようと町工場は努力する。

 

また、1製品あたりの利益減ってしまうので、それをカバーするために生産量を上げるために従業員にサービス残業を強いるようになるとブラック企業へと変貌していくのだ。

そして、世間から叩かれて潰れる。

 

 

こうした末路を恐れる会社が目を向けるのが、海外の低賃金労働者だ。

だが、海外の特に中国や台湾で生産するコスト的なメリットは縮小傾向にあり、もはや日本国内とのコスト差は海外輸送にかかる運賃や税金によってかき消される始末です。

 

 

このような現実を生んでいる要因の1つは、日本のものづくりを担う職人の高齢化にもある。

70歳以上の年齢になる彼らは「引退組」と言われ、今までやってきた金属加工の仕事を会社としてではなく、個人の趣味的な作業として安受けしているのだ。

 

特に、工場の家賃もいらない、工作機械のローンもないという金銭的な拘束が緩い「引退者」たちは、若い世代の脅威になってしまうのだ。

 

 

とにかく、普通に会社経営をしている者からすれば、到底考えられない金額で部品加工を請け負う「引退組」の人たちに仕事を出している発注者は、もしも彼らが本当にやめてしまった場合のことを想定しているのか?と思うこともある。

事実、ここ数年の間に弊社にも多くの無茶な値段の仕事依頼が増えています。

 

「どこもやってくれないんですぅ。。。」

 

っておっしゃるのだが、そりゃそうでしょ!という価格を提示してくる。

 

もう、趣味ですらもやらなくなり、本当の引退をする元職人さんたちが増加する中、価格を据え置いて仕事をさせるために発注者が次に目を向けるのは海外です。

海外なら低価格でやれるだろうと。

 

だが、それは甘い考えなのです。

適正価格の範疇を超えた価格は、海外でも適正ではなくなりつつあるのだから。

もう、あきらめて価格を上げるしかありませんと言いたい。

 

 

海外で部品加工の協力をしてもらう本当の理由

 

日本のものづくりを担う職人の高齢化で考えないといけないのが、生産キャパの確保です。

 

ものづくり人口が減った先に待っているのは、仕事を受けてくれる会社が無くなっていくということ。

今までは、発注者であるメーカーが仕事を下請けの競合ライバル会社どうしで取り合いさせ、低価格という恩恵を享受できた時代です。

 

ところが、特定の仕事を除いた一部の仕事は「どこもやるところがない」という状況になる。

見積もりさえもしてくれないことだってある。

 

「加工はできるが、受注過多でこれ以上は対応できません」

「納期が間に合わないので辞退します」

「価格が合わないと思うので辞退します」

 

こういった言葉が加工会社から返ってくるのです。

「何とか加工をお願いできませんか?」と言っても、「いやぁ、今は無理ですね」と一蹴されてしまう。

 

 

仕事(加工)はできるが、受注できるだけの十分な容量(キャパ)がないのです。

 

 

勿論、納期が1年、2年とあるなら話は別だが、何故か激安で超短納期の仕事ばかりが多い。

発注後に「明日もらえますか?」なんて馬鹿げたことを言うところもあるが、論外である。

部品加工会社は小売店ではありません!

 

 

ちゃんと仕事ができる部品加工会社は、仕事の絶対量が減ったとしても、日本国内で請け負える会社数の絶対量の方が猛スピードで減少するので、やがて忙しい毎日になるのではないかと予想している。

 

だが、問題はそういった甘い予想にあぐらをかいていると、痛い目に合うと言いたい。

 

金属加工の仕事も経年で内容が色々と変わる。

今までと同じか、類似した加工内容の仕事が続くなんて保証もないわけです。

「仕事は増える」という中身についても、どんな種類の仕事が増えるかは予想できない。

 

なので、今のうちから色々な内容の仕事に触れ、挑戦してみる姿勢は必要です。

 

 

特に、現在の自社では対応できない内容でさえも、協力会社と密なネットワークを形成することで対応してゆかなければならない。

 

当然、日本国内だけでなく台湾や中国などの海外企業とも関係を作っておくことは、急な案件に対しても何らかの対応が出来得るからです。

 

適正価格の中で部品加工を請け負える協力会社の数を広げ、キャパを拡大するという目的がそこにはあるのだ。

 

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