ステンレスの旋盤量産品加工ってどんなチップ(工具)を使ったらええの?

ものづくり

先日、ステンレス鋼(SUS304)の中ロット量産品の見積もり(月産300個レベル)を台湾の加工屋さんにお願いしていました。

回答の内容的にはよい感じではないかと個人的には思いましたが、結論を下すのはお客様です。

 

さてさて、仕事が決まるかどうか・・・

 

そんな折、12月だというのに今日は朝から何ともスッキリしない天気で気温も何故か19℃くらいまで上がる生ぬるい空気の中、遥々、台湾から弊社の協力会社である鑫嘉豐實業有限公司(HCF株式会社)のリンちゃんが日本に研修にやってきました。

 

リンちゃんです↓

 

今回の量産品の見積もり案件も彼女に管理してもらっているのですが、台湾からステンレス鋼(SUS304)のサンプル加工品をわざわざ持って来てくれました。

 

見積もり案件のものではありませんが、類似品で在庫で持っているものです。

それが、こちら↓

 

大きさは約Φ30(直径30mm)程度、厚み20mm程度です。

凄くキレイに仕上がっていますね!

この品質なら問題ナッシングでしょう。

 

でも、これについて質問があるみたいでした。

それは一体!?



台湾から日本への研修の目的とは?

今日は12月22日。

 

やぁ、もうすぐクリスマスだというのに、リンちゃんご苦労様です~。

 

もしかして、生ぬるい気温は彼女が台湾から一緒に連れてきた!?

というのは冗談で、今回の訪問目的は

日本のものづくりにおける品質そのものの基準を知ること

品質管理研修および弊社と一緒にこれから様々な仕事をやっていく理念たるものをじっくりと語り合う機会を設けること

以上です。

 

そして、現在、台湾の加工屋さんをご利用頂いている弊社のお客様と実際にリンちゃんに会ってもらいお互いの信頼関係を強化することも目的の1つです。

 

ようやく、1つ大きな仕事の区切りが先日ついたところでしたので訪日がこの日のタイミングになりました。

台湾の正月は来年1月27日から始まる旧正月が本番ですが、日本では師走で慌ただしい日々が続いておりますね。

 

 

台湾からの質問「ステンレスの旋盤加工に使うチップ(工具)はどれがベスト?」

今回のリンちゃんの訪日で持って来てくれたステンレス鋼のサンプル加工品ですが、台湾の加工屋さんが質問したいことは、量産になった場合に使用する旋盤加工用のチップ(工具)はどんなものがベストなのか?ということ。

 

これに対する答えは非常に難しい。

 

ステンレスは粘りが強くて一般的には難削材とされています。

削りにくい!と加工を嫌がる会社も多いですね。

ステンレス専門の加工屋さんがあるくらいですから。

 

 

SUS304はオーステナイト系のステンレス鋼

一般的な認知はステンレスは錆びない、磁石がひっつかないというものだろう。

でも、ステンレスにも種類は色々あるし、中には錆びるものも磁石がひっつくものだってある。

 

焼入れだってできますからね。

 

ステンレス鋼の各種類における詳細な特徴などは割愛するが、今回の量産加工品の見積もり案件で使用するのはSUS304という種類のステンレス鋼だ。

 

私達金属加工屋はUSU304を「サス・サンマルヨン」と呼ぶ。

これはいくつかのステンレス鋼の中でオーステナイト系と呼ばれるものに分類されるのですが、加工硬化(ひずみ硬化)が大きい金属です。

 

加工硬化とはざっくりと表現すれば、加工している時の応力(負荷)によって金属の結晶構造が変形することによって金属が硬くなってしまうことです。(塑性変形)

 

特にステンレス(SUS304)の量産になった場合、最適な切削条件を見出せないまま進めるとチップ(工具)の消耗が激しく目的の面粗度が十分に出せなかったり、寸法公差に誤差が生じてくるようにもなってしまいます。

 

 

ステンレス(SUS304)の旋盤加工の最適な条件とは?

ステンレス(SUS304)のような加工硬化の大きい金属を旋盤で切削する時の加工条件は?と聞かれても、加工物の形状等の要素が絡んでくるので一概に言えることではありませんが、概ね共通する要素というものがあります。

 

回転数(切削速度) : 気持ち低めの設定にする

送り速度(ワークの送り) : 少し高めに設定

 

イメージでは、高速で少しずつ削るのではなくてゆっくりと大きくザックリと素早く切り込んでいく感じです。

 

一度、加工硬化が起きてしまうと、チップ(刃物)が滑ってしまい歯が立たなくなってしまいます。

 

 

ステンレス鋼(SUS304)の最適な切削工具(チップ)とは?

ステンレスは熱伝導率が低いため、加工で発生する加工熱は工具(チップ)の方へ移ってしまいます。

なので、チップの先端が高温になり破損(欠ける)するようになりやすいのです。

 

 

チップはセラミックやハイスの他にも超硬チップなどが選べますが、それなりの靭性(粘り)がありながらも耐磨耗・耐熱性を有しているものが一番理想の刃物(チップ)と言えます。

 

 

具体的に推奨される工具例を挙げてみますと以下の通り

 

住友電工 : AC610M、AC630M(カタログ

三菱マテリアル : US735(カタログ

京セラ : TN6010(カタログ

 

他にもメーカーはありますし、色々と試してみるしかないかもしれません。

 

 

 

チップ(工具)の材質?記号での選び方とは

旋盤用のチップには大きく3つの種類(記号)があります。

 

P種、M種、K種

 

ザックリと分けるならば、鉄を削る場合はP種。

ステンレスを削るならM種。

アルミや真鍮などの非鉄金属を削るならK種。

 

こんな分け方です。

チップの材質成分のコバルトの量でその性質を分けていると認識していればよいかと思います。

コバルトの含有量を大きくすると靭性(粘り)が強くなって、割れにくい。

その反面、耐摩耗性は低くなるのです。

 

 

とにかく、ステンレスを削るならM種!でよいでしょう。

 

 

切削加工の条件出しは複合要素の消化による

 

どんなに良いチップ(工具)を使っても、加工条件がマッチしないと刃物の寿命が悪くなることは間違いありません。

ついつい、良いチップ(工具)があったら教えて~ってなるのですけど、こればかりは絶対にコレだ!と言い切れるものがないと私は思っている。

 

また、メーカーカタログに掲載されている「推奨加工条件」は実際の加工現場ではあまり参考にならなかったりもするので、自分で条件出しをする他ないだろう。

(もちろん、参考にはしたらよい)

 

 

台湾の加工屋さんでは、日本の工具メーカーの刃物はすばらしい!だから、技術も高いんだろうって思っている人は結構いる。

工具の影響や効果は確実にありますけれど、決してそこだけではありませんよ~って伝えたいですね。

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