『こんにちは!今日は加工って図面通り作るだけじゃないんやで!ってことに私が痛感させられた体験談を交えてお伝えしようと思います。』
『部品加工等に精通していない者にとっては、図面通りに作ったはずなのにNGってなんで?なんで?って思うことが沢山ありますし、台湾と日本の間で冷や汗をかきながらもがいていることもあります。』
『一部は台湾の加工屋の認識違いもあるのですが、今後、台湾やその他海外へ部品加工依頼を考えている方は参考にしてね。』
図面通りに作ってもNGとなる、驚愕の焦り・・・
ビックリ!!!(このコアラが可愛くてたまらんわ)
私がこれまでにお受けした仕事で、トラブルがあった例の中には確かに図面通りに作ったつもりになっていることが原因となっている場合がありました。
そうです「つもり」です。
台湾側としては、間違いなく作って検査もできてるはずと思っていたのに、実際は違う!というもの。
日本のお客様サイドからすれば「ちょっと!ちょっと!」となりますので、大変ご迷惑をおかけした体験です。
もう私としては、焦りまくります・・・
台湾メーカーからは「間違ってない!」と言われるし、日本のお客様からは「常識やろ!」と怒られるし・・・
『あっ!別に愚痴を言っているわけではないですよ(笑)』
とりあえずは、どんなことがトラブルになったのか知りたいですよね?
その内容レベルにもいくつか別れますので、少し紹介してみます。
<初級>台湾語・日本語の微妙な違いによる図面の読み方と習慣の若干のズレ
「M6」
これは、ネジ(タップ)加工の規格の1つです。
この記号が加工図面に書いてあると、ネジ穴を作ってくださいねって意味になります。
加工時にも「M6ネジ加工」のことを「M6タップ加工」と称することが多いです。
日本でも台湾でもおそらく世界中で共通した記号・規格ですので、この加工自体でトラブルになることはまずないでしょう。
でも、問題はそこに付随してくる内容です。
「ネジ穴を作ってね」と言われても、どれくらいの深さのネジ穴がいるの?ってなりますよね。
また、ボルトの頭が沈む部分を「ザグリ(座ぐり)」と呼ぶのですが、そのザグリの径の大きさや深さは?ってなりますね。
例えば「3-M6深さ12、8.5深ザクリ深1」と図面中で指示されている場合、日本ではどう加工するでしょうか?
これは実際にあった例ですよ。
私が依頼した台湾の協力工場は以下の通り加工しました。
M6(ネジ)タップ用の下穴加工深さ12mm
M6(ネジ)タップ加工深さ8.5mm
ザグリ深さ1mm
さて、どうでしょう?
間違っていないですか? それとも、間違っていますか?
結果は×
タップの深さが足りないじゃないか!とクレームが来ました!!!!!
えっ!!!
ですよ。。。。
日本のお客さんの話を聞くと、「12」が有効深さやと。
「日本の図面分かるのか?分からないのか?」てお客様が怒りました!!!
でもでも・・・・「8.5深」ってのは何でしょう?どういう意味??
台湾人であり、なおかつそこまで機械加工に精通していない私からしてみれば謎。
「3-M6深さ12、8.5深ザクリ深1」
これが意味する正解は、M6タップの有効深さ(ネジが入る深さ)は12mm
直径8.5mmのM6用のザグリを深さ1mmで加工してくださいということ。
分かる人にとっては当たり前。
でも、知らない人にとっては意味不明。
どんな業界でもあることですね。
今回トラブルがあった品物は、加工後に焼入れをしてカチコチに硬くしたものなので、追加工が簡単にはできないものでした。
結局はM6タップ加工を放電加工という別の加工方法によって修理しました。
何とか解決できたことは良かったけれど、精神的に疲れました(汗)
とにかく問題を解決することが一番大事ですね。
次は問題点を探ることです。
日本の先輩から教えてもらいました。
加工ワークの寸法だけではなく、図面に記載されている加工部品と一緒に使われる「備品リスト」も載っていたらキチンと確認しないといけません。
実は、そこに加工における問題解決のカギやヒントが隠されている場合があるからです。
先ほどのM6ネジ(タップ加工)においても、まさしくその通りでした。
加工図面を確認したら、「六角穴付きボルト M6X15 数量3」という備品リストが確かに書いてあります。
そうなんです。
この部品には長さ15のM6ボルトを使いますよってことです。
実際には、長さ15のボルトは10~11mmくらいまでしか入れないのですが、確かに8.5mmの深さで加工していたら入りませんよね。。。
なるほど~~~勉強になったわ!
同時に、謎が解けてものすごく嬉しかったです。
日本で当たり前だと思ってることは、海外ではそう思わないことがたくさんあります。
それぞれのことを一々間にお伝えするのは私の役目です。
今回のトラブルで問題内容が分かったので、次回は同じミスが発生しません。
問題点が解けるとすっきりです~~~\(^_^)/
<中級>開発段階のプロジェクトは部品の組み合わせ加減
開発設計段階の仕事依頼を受ける時には別途要注意!となる事項があります。
特にセット品のことですね。
- 開発初期にはまだまだ各部品の設定に確定ができない要因があるから、まずロングスパンになるかもしれないという心の用意をしっかりしましょう。お客様と一緒に問題を乗り越える根性が必要です。
- セット品の場合、できる限り、嵌め合う部品を先に支給頂くようにお願いしましょう。(ベアリング、ボルトなど)
こうすれば、試作段階でも台湾で加工しながらテストができます。
開発段階、公差を厳しく(理想的に)設計する事は多少ありますが、そのパーツと嵌め合う部品を先に提供することにより、早期に修正ができて、開発プロセスの貴重な時間と費用も節約できるでしょう。
- 図面に書かれてない「後処理」・「追加工」があるかどうかを確認すべきです!
また、表面処理があれば、その前段階の加工方法や清浄のやり方とクリーナ、面粗度など、表面処理に影響されるかもしれない要素を一度お互いに話し合ってから、作り始めた方がいいと思います。
少しでも失敗率を減らしたいですからね(^_^;)
セット品になると、色々なパーツが組み合わさります。
たとえ、組図をもらっても理解できない加工屋さんもいっぱいあります。
彼らは、基本的に1枚1枚の図面に書かれた部品を作ることに専念していることがほとんどだからです。
でも、お客様サイドにとっては組みつけられてこそ製品です。
微調整をしないといけないもの。
表面処理によって不具合が生じてしまう可能性。
要素は色々ありますので、そういった部分もお互いにフォローできる部分は助け合ってやろうと思ってくださると大変有り難いです。
台湾側も「作ってハイ終わり!」にしたくないので。
<上級>図面通りの物を作ったのに、求められる公差に入ったのに、品物が使えない!?
気持ちはこの通りです↓
誰か私の気持ち分かってくれますか?
その原因は謎である事もおかしいことではないです。( ;∀;)
(少なくとも私にとっては)
加工の世界は奥深いです。
台湾の加工技術はすごいですよ!
こんな加工もあんな加工もできちゃいますよ!
こんな風にアピールしたいところは山々ですけど、部品加工の世界はレベル1から100まで様々。
それを知らずに台湾すごいやろ!って自慢しちゃうのは「井の中の蛙 大海を知らず」です。
初めて壁にぶつかった時のショックは大きいかもしれません。
でも、私は思うのです。
壁にぶつかった時こそ、成長のチャンスだと。
それは日本の企業でも同じ事。
ただ、私の役目は台湾企業と日本企業の架け橋になれるように頑張る事です。
ところが、経験が浅い私にとってはホントに「平野さん!どうしよう?」ってしか言えない状態になってしまうです。
情けない...
平野さんってこの人ねww
↓
『どうも、管理人の平野です(笑)』
『それなりに、加工のこと分かっているつもりです・・・』
幸い、頼りにできる職人?である平野さんが支えてくれる事は有り難い。
仲間が居てくれるのは何より心が強いです。(感謝の気持ちいっぱい)
今回発生した図面通りに加工したのに使えない!!という問題は加工プロセスの順番(流れ)により、品物が少し変形したことによるのかもしれません。
寸法検査では確かに間違いなくOK。
でも微妙な歪(ひずみ)があるのかなぁ?
加工プロセスというのは、気にしなくてもよい部品と考えておかないと大変なことになっちゃう部品とがあります。
特に熱処理がある加工物に関して、溝加工がある場合は溝を先に加工するか、もしくは熱処理後に加工することによって、差が出てきます。
熱処理では基本的に加工物が熱によって変形するので。
加工って作ってから問題が生じる状況はあるかもしれませんが、事前準備・検証経験で成功か、失敗か、計算できることもあるだろうと考えられます。
関連のある知識を勉強すればするほど、物事は繋がっていることを深く感じております。(加工の基礎となる数学、化学、物理の知識を蓄えるのが必要です。)
『平野さんから教われたことを皆さんにシェアしたいと思います』
- 「仕事が欲しい」という気持ちより先に何ができるか考えみましょう。
把握ができない仕事を受け、無理矢理すれば、お客様も加工工場も大変です。
どこまでできるのかを判断し、仕事を受けるのは重要な責任です。
- トラブルが起きた時、まず問題解決に向かって行動しましょう!
担当者を責める、責任は誰か等々は二の次です。
先に解決方法を考えて動きます。
(まだまだありますよ~(笑))
これらは台湾でも日本でもお仕事を受注する上でとても大切なことですね。
当たり前のようで、ないがしろにしている部分多くないですか?
開発段階の仕事ではいつもの仕事と比べたら不安定要因が多く大変かもしれませんが、お客様と加工工場の「絆」を作れるチャンスだと思います。
共同で開発プロセスを成功させるのは仕事の大きなやりがいになるし、経験の積み重ねが今後新たな挑戦するとき、自信になるでしょう。
将来、実績のないプロジェクトを恐れず、日本メーカーのパトーナを目指して頑張って行きたいと思います。
決してこのような状態にならないようにね!
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