『安さで勝負する!』そんな理由で台湾を利用する時代は衰退する

ものづくり

先日、仕事関係の知人からこんな相談を受けた。

「今、○○のような仕事の案件の相談を受けているんだけど、台湾でやったら安く済むかな?」

 

それに対する私の答えは「わかりません!」です。

え~って思われるかもしれませんけれど、わからないものはわからない。

詳細な仕事の中身をきちんと検証してからでないと、いい加減な事は言えないですから。

 

 

今回の相談は、今現在、とある仕事をA社から受注しているライバル会社があるのだが、A社がさらに発注元であるエンドユーザーから値下げ交渉を受けているようで、そのライバル会社にも相談したらしい。

だが、現在でもカツカツか下手すると赤字に転落しかねない状況なので、到底そんな相談には乗ってくれないと言うのだ。

 

そこで、困り果てたA社は私に相談してきた知人の会社に踵を返して相談しに行ったということだ。

そんな価格の相談を受けた知人も何とかして仕事を取りたいと思っているようで、その理由も継続的にかつ他の抱きかかえの仕事もゲットできるチャンスだからだ。

知人は真っ先に台湾や中国の加工会社と取引がある私の顔を思い浮かべたという。

 

う~ん。

嬉しいような、嬉しくないような(笑)

 

常々「台湾=安い」というイメージはあまり持ちすぎない方がよいと周囲には伝えているつもりです。

もちろん、中には本当に安く加工してくれる物もありますけれど、全部が全部ではありません。

 

 

金属部品加工の価格(単価)が大きく反映されるのは、人件費が結構大きいところでもある。

タイトルにも書いたように、台湾が安さで勝負するという時代はもうすぐ衰退していくことは目に見えているのです。

 

今回は、その理由を台湾のお給料事情に絡めて私なりに書いてみようと思います。



台湾人の平均月収を統計から見て日本人と比較!

職業、年齢、性別によって月収が全く異なるのは、日本でも台湾でも同じ事です。

それを踏まえた上で、台湾人の平均月収はどれくらいなのか?

 

2016年2月に台湾の行政院主計総処が公表した2015年の台湾人の平均月収は4万8490台湾元(約16万4500円)となっている。

賞与(ボーナス)などもあるので、その月々によって多少の違いはあろうが、これくらいが平均だ。

 

だが、単純に「平均」の金額だけでは判断できないリアルな事実もある。

台湾の格差社会は拡大し続け、投資家や大企業の経営者などの資産家と一般の従業員の賃金は相当かけ離れているのです。

だから「平均」はあくまでも「平均」でしかいない。

 

月収が10万円以下の人たちだって非常に多い。

そこに加えて物価、購買指数なども考えてみる必要があります。

 

だって、月収10万円しかなくても、1ヶ月の生活に最低限必要なお金が1万円で済むならリッチ!ですから。

 

 

そんな時、こんな資料を見つけた。

 

これによれば、台湾の物価指数の上昇率に比べて、月平均の給与額の伸びは低い。

その背景にあるのが、激烈な価格競争の波であり、台湾も中国本土に世界中が期待する「低コスト」に抗えるわけもなく厳しいコストカットに迫られている状況にあるのです。

コストカットで真っ先にしわ寄せが来るのが人件費でもあり、結果的に思うように賃金が伸びていない。

 

実際に台湾へ旅行などで行くと、意外と物価が安いと思えないことに気付くだろう。

 

 

ただ、日本人である私が本ブログの共同執筆者でもあるりんちゃんなどから聞いた話に驚きの内容がある。

それは、自炊するよりも外食する方が安く済むというところだ。

 

そんなに外食が安いのか!?

そう疑ったのは事実だ。

でも、スーパーやコンビニで売られている物の値段を見ても、さほど大きな差は日本とないようにも思えるが、中には日本の1/2~1/3くらいの値段で売られている物もあるので、一概に安い、高いと言えないなぁというものの、やっぱり日本よりは安い感じがする。

 

 

これから先に起こる台湾での賃金上昇の波

台湾は日本と同じように、現在進行形で少子高齢化社会が進んでいる。

若年層の未婚率の上昇も、格差社会問題さえも日本と同じなのだ。

 

でも根底にある考え方や将来に向けたビジョンは日本人と台湾人では少し違うのかな?という感じも見受けられる。

 

仕事に対する熱意もかなり感じる。

それは、結局死ぬほどに我武者羅に頑張って働きまくることで、より豊かな将来を手に入れたいと願う気持ちはビジネスの要件で対面することでも何となくわかる。

それだけ、やれそうなことはチャレンジしてみたい!という感じです。

 

少なくとも、私の周りにいる日本人はどうも守りの姿勢が強いのです。

無謀に近いことはもはやチャレンジと呼ばない類だ。

 

 

これだけ、人間的に仕事に対する熱意の差を感じるのは中国でも同じことかもしれませんが、私が関わる中ではどこか中国の方がピリピリした空気が漂っている気がしてならないのです。

 

 

それでも仕事熱の高い台湾ですが、人口がこれから先細りであることに加えて物価の上昇などの複合的な要素を交えると、やはり賃金の上昇はいずれ起こるだろうと予測する。

もしくは、先進国の平均賃金には近づくことになると思う。

 

 

そうなると、これまで「安さ」だけを目的に台湾を利用していた海外企業の中には次なる一手の瀬戸際に立たされる日がくるかもしれないのだ。

弊社も色々と台湾企業には価格の面でも技術の面でもお世話になっている部分があるが、今後の課題というか目論見と言えばよいのかわからないが、少なくとも金属部品加工における設備投資コストが現状は安い台湾で成長しそうな企業や今まさに成長している企業とタッグを組み、将来の幅広い仕事の展開を有意義なものにする手立ての1つとして持っておきたいのです。

 

そこには、決して価格競争だけに終始しない結末を用意できることを当面の目標にしたいところだ。

 

 

低価格競争に苦しめられる東南アジアの脱却がカギ

「世界の工場」と言われている中国。

その理由は人件費の安さにある。

台湾も中国ほどではないが、日本と比べると賃金の安さが魅力的だと捉えられている部分はある。

 

 

だが、ここ十数年の間に中国も台湾も経済発展を遂げつつあり、人件費もこれまでよりも上昇傾向にある。

健全な賃金にまで成長してきたという見方もあれば、それに苦虫をかみ殺すようにしかめっ面をする海外企業もあるはずだ。

 

世界中の企業がこぞって中国を利用していた時代は、恐らく終焉を迎えるであろう。

 

 

実際に、私達のように金属加工業界で生計を立てている者の間でも、その意識は高まりつつあると思います。

弊社がお世話になる上海や大連などの大都会周辺では、もはや安さだけを求めることはできず、当然、仕入れには運賃もかかってくるので結果的に国内で処理する方が安くなることもある。

 

 

ただ、同じ中国でも賃金に地域格差は非常に大きい。

例えば香港北部に位置する広州エリアでは驚くほどの低賃金で毎日過重労働を強いられている人々がいる。

時給に換算すると200円くらいなんてザラです。

 

そんな劣悪な労働環境の中でしか生きていけない人々を作り上げているのは、紛れも無く世界中の一流企業だ。

一部の金持ち企業が自社の製品をより低価格でお客様に届けるために、弱者をいじめ倒しているようにも見える。

 

だが、必ずこういった価格競争という負のスパイラルはいつしか崩壊する。

 

徐々に世界の工場と言われていた中国からも、工場を撤退する企業は多くある。

設定コストが維持できないからだ。

彼らは次に目をつけたのが、東南アジア。

 

安価工場、最後の砦とも言われているカンボジアは今、世界の企業から『安い』というメリットで続々進出が続いているようですが、いずれ行き先は無くなってしまうだろう。

 

 

安さを求めるのは私達個々の欲望です。

単純に賃金・値段を上げれば良いというわけではないが、価格競争の中で広がった格差は次なる「新しい格差」を生み出していくと私は予想している。

 

賃金や物の価格の格差が世界中で小さくなっていった先、ビジネスパートナーと仕事のやり取りをするための理由は?

それは、間違いなく「人と人の間にある心・信頼」だろう。

 

例えば、A社とB社が全く同じ品質の同じ価格の製品を作ることができたとする。

あなたはどちらの会社からその製品を買いますか?

その理由は何ですか?

 

こう問われたら、間違いなく信頼できそうな会社を選ぶだろう。

 

たとえ、本当に製品そのものに全く差がなくても、最終的に決断を下すのは人の心だ。

世界中の人間社会は全て心で繋がっている。

心のないビジネスで成長を遂げても、やがて崩壊する。

 

 

私達が常々、価格だけでなく人の繋がりで仕事がしたい、利益最優先ではないとするのはそういう部分が大きいからです。

どうしても、下請け零細企業は発注元であるメーカーからの圧力に屈してしまいがちですが、製品を実際に作るのは我々です。

 

我々の苦労や努力を海外の協力企業と手を組みながら、メーカーに伝えることも1つの使命なのかもしれない。

 

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